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< 記事一覧サブスクリプション型のサービスが増えたことで消費者の購買行動は変化し、顧客価値の重要性が高まっています。本記事では、顧客価値が求められる背景とマーケターの役割の変化、価値向上のためのマーケティング手法について解説します。
更新日:2024.1.3 公開日:2022.5.19
「お客様に末永く満足してご利用いただきたい」
これは、マーケターだけでなく事業に携わるすべての人の想いです。
当たり前ですが、商品・サービスは一度の購入・契約で終わってしまうのは望ましくなく、リピート(継続)してもらうことを目指します。
リピートしてもらうために重要なのが「顧客価値」です。商品・サービスに満足し価値を感じてもらえなければ単発での利用で終了してしまいます。
昨今、この顧客価値の重要性が高まっており、それに応じてマーケティングの役割にも変化が起きています。
本記事では顧客価値が求められる背景と、価値を高めるためのマーケティング手法を解説いたします。
※当コンテンツは、webマーケティング支援の専門家であるピクルスが提供しています。
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目次
顧客価値とは、顧客が認めた商品・サービスの価値のことをいいます。
重要なのは「顧客が認めた」という点です。
どれだけ生産者・販売者が価値を訴えてもそれを顧客が認めない限り顧客価値は高まりません。
例えば、健康志向というトレンドを例に取ってみましょう。巷には自然派食品や健康に気を使った商品があります。これらの商品は通常の商品より少し割高に価格設定されていることが多いです。健康に気をつけたいと思っている消費者から価値を認められているからこそ可能な価格設定です。
そのようなトレンドにのって自然派素材を使った七味唐辛子を通常より1.2〜1.5倍の価格で販売したらどうでしょうか?
一部の消費者には受け入れられるかもしれませんが、おそらく売れないでしょう。そもそも七味に化学品がほとんど添加されていないことを知っていますし、使用量も少なく顧客がその価値を認めないのが理由です。
一方で、顧客価値を重視することで成功した事例としては「サラダチキン」が挙げられます。
低カロリー、高タンパクの「サラダチキン」は、ダイエットや筋トレに良い栄養食品として、近年ではすっかりスーパー、コンビニの定番アイテムになっています。
「サラダチキン」を開発した企業は、スーパーでの試食販売の際に「トリのムネ肉の皮を捨てている」という顧客の声に耳を傾けて皮を剥いた商品を思いついたそうです。皮を取っただけですが、会社の売上は一気に3倍にも成長しました。
このように顧客の視点に立って価値を評価することが、商品・サービスを開発・提供する際には非常に重要です。
サブスク時代より前のマーケターの役割には以下の3つがありました。
1. 顧客に興味をもってもらい
2. 納得してもらい
3. 購入してもらうこと=受注目標の達成及びシェアの拡大
BtoBビジネスの場合、3は営業部隊が担うこともありますが、どちらにせよマーケティングが関与するのは購入してもらうまででした。つまり、購入後の顧客との関係維持に努めるカスタマーサクセスは別の部署が担当していることが多かったのです。
このマーケティングの役割、位置づけに変化がおきています。
その大きな理由の一つが、サブスクリプションビジネスの拡大です。
サブスクリプションとは、定額料金を支払うことで一定期間サービスを利用できるビジネスモデルです。クラウド型ITサービス、動画・音楽の有料配信サービスやカーシェアリングなど、BtoB/ BtoC関わらず様々なサブスクリプションビジネスが生まれています。
このサブスク時代を迎えたことで、顧客の購買行動がモノの「所有」から「利用」へと変化しました。
その結果、意思決定のポイントも「購入」から「契約」へと代わり、契約関係を続けることの重要性が高まっていきます。
するとマーケターの成果指標は、受注・市場シェアだけでなく顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)も含まれるようになり、カスタマーサクセス領域へと役割が広がりました。顧客生涯価値とは、一人の顧客が取引を開始してから生涯に渡ってもたらしてくれた利益の総額を指します。
顧客生涯価値(LTV)について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
LTVを増大させるには、長期間解約せずに顧客であり続けてもらう必要があり、商品・サービスに満足して価値を感じ続けてもらわなくてはなりません。この顧客の期待を上回る満足を提供することによって生み出される価値のことを「顧客価値」といいます。
顧客価値を常に維持・向上させることができなければ顧客は離れてしまい、最終的にLTVを低下させてしまうのです。
では、どうすれば顧客価値を向上できるのでしょうか。その答えを知るために、まず顧客価値の構造を理解することから始めましょう。
顧客価値において重要なのは、顧客が価値を感じてくれているかです。当たり前ですが企業が価値があると主張しても、顧客がそう感じなくては意味がありません。
そしてもう一つ大切なポイントは「価値は段階的である」ことです。価値は常に一定ではなく、一度価値を感じてもらえても、そこに留まっているとすぐに低下してしまいます。
顧客価値の階層について、アメリカのコンサルタントのカール・アルブレヒト氏が90年代に出版した著書「見えざる真実」で提唱した4階層の顧客価値ヒエラルキーをご紹介します。ヒエラルキーとは、階層的、階級的という意味で以下の図のようなピラミッド状の形態のことをいいます。
この4階層のヒエラルキーは、顧客がどの要因に最も高い価値を見出しているのかを知ることで競争優位を見出そうとしたものです。
ヒエラルキーの最下層は基本価値です。これは、絶対不可欠な要素です。クルマであれば、ガソリンが入っていればしっかりと動くこと、そして、ブレーキを踏めば止まることです。
第2段階は期待価値です。これも当然のごとく期待するもので、クルマディーラーによる細かな商品説明などが該当します。
3段階目は、願望価値です。顧客は必ずしも最初から期待していなくても、あれば高く評価するというものです。クルマの場合、顧客の周辺の月極駐車場の情報を集めてくれたり車の愛好家が集まるサークルを紹介してくれるなどでしょう。
最上層のレベルは未知価値です。文字通り、顧客が期待すらしなかったもの、驚きをもって受け止められる価値です。未知価値は、一度、顧客が認識をすると既知になってしまい願望価値に格下げされます。長続きしないというのが難点です。
上記の顧客価値ヒエラルキーはサブスクリプションビジネス登場以前に提唱されたものですが、サブスクリプション拡大を前提においた著書「マーケティングの新しい基本」(奥谷孝司、岩井琢磨著)において紹介されているカスタマーバリュー(=顧客価値)の3階層を比較してみると、顧客とのつながりが顧客価値の向上に寄与することがより鮮明になってきます。
まず、基本価値と期待価値ですが、右側のピラミッドでは顧客が当然のものとして受け取る「機能価値」としてまとめられています。しかし、どんな商品でも機能価値だけではもはや顧客は買ってくれません。
3段階目の願望価値は「体験価値」と置き換えられています。デジタルを含めた顧客接点の中で顧客の体験による価値が期待以上のものである場合に得られるものです。
最上層の未知価値は「つながっている価値」に置き換わります。顧客が企業とつながっていることで未知の驚きを感じたときに時に得られる最高級の顧客価値です。
2つのピラミッドを比較すると、顧客とつながり続けて顧客価値を維持することの重要性がより鮮明に伝わってきます。
つながりを活用して顧客価値を向上するためにはどのようなマーケティング活動が必要となるのか?次章で見ていきましょう。
デジタル技術が進展する以前は、顧客とつながり続けることは非常に困難でした。例えば商品・サービスをどれくらい活用してくれているのかも、お客様に直接話を聞くしかなく、一時的につながることはできても継続的なつながりを持つのはどうしても難しかったのです。
しかし、現在ではクラウド型のサービスが増えてきて、利用状況を把握しやすくなったのはもちろん、自社アプリをダウンロードしてもらったり、LINEに友達登録してもらったりすることで大多数の顧客とつながることが可能になりました。
そしてつながりをもった顧客に対して常に新たな価値提案ができるようになったのです。
ここでの注意点は、つながりを持つこと自体はゴールではありません。絶えず新たな価値提案ができないと簡単につながりを断たれてしまいます。
では、どうすれば顧客から価値を認められてつながりを維持することができるのでしょうか?前述の奥谷、岩井氏の著書「マーケティングの新しい基本」において提唱されているのが、エンゲージメント4Pです。
皆さまはマーケティング4Pのフレームワークをご存知でしょうか?
マーケティングの実行戦略として、商品・サービスを顧客へ提供するまでの戦略の組み合わせのことです。具体的には、製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の4つの英単語の頭文字をとって4Pです。
このマーケティング4Pにおける、Place=流通戦略は現場のオペレーションレベルで議論されることも多く優先順位が他の戦略要素よりも低くなる傾向があります。
しかし顧客とのつながりを考えるうえで、顧客接点としてのPlaceは極めて重要な役割を担っています。そこで提唱されたのが、エンゲージメント4Pです。
エンゲージメント4Pとは、これまで流通、販売経路と訳されていたPlaceが、顧客とのつながる場所=顧客接点という意味に変化しています。Placeを顧客接点と置き換えて、4Pの中でも最優先に持ってくることで、残りの3P(製品、価格、販売促進)に対しても競合が追随できないような変革を加えるというものです。
エンゲージメント4Pを図示すると以下のようになります。
4Pの一つであるPlaceを顧客とのつながりの場とすることで、顧客一人ひとりにパーソナライズしたProduct(商品・サービス)、Price(課金方式)、Promotion(販売促進)へと変革をもたらします。
また企業と顧客がつながることで、企業と顧客との双方向での情報交換が行われます。顧客の購買データや行動データは蓄積されていき、そのデータにもとづいて継続提案が行われます。この提案こそが顧客価値の向上につながるのです。
では、自社にエンゲージメント4Pのコンセプトを導入するにはどうすればよいのでしょうか?
以下の3つのステップで進めてみることをおすすめします。
前述の通りマーケティングミックスの構築において、Place(流通戦略)は一番最後に検討というケースが多いと思います。また、すでに会社が持つ販売網を活用することも多く、現場の営業部門が担っていることも多いはずです。
まず、顧客とのつながりを作る流通戦略のあり方を固定観念にとらわれず評価しなおしてみましょう。
そして、そこからどうすれば顧客とのつながりを生み出すことができるのか考えましょう。ゼロからはじめるのであれば一般的な会員カードシステムやSNSでのフォローキャンペーンなどは、顧客を知るという意味でも重要です。
ピクルスでは、SNSキャンペーン運用のためのサービス「キャンつく」を提供しています。
株式会社ジーエス・ユアサバッテリー様からは「キャンつく」を通して収集したデータが、今後のキャンペーンや販売促進に有効であったとのコメントをいただいています。
データの分析から顧客ニーズを把握し、新たな取り組みへとつなげることで、顧客とのつながりをより強めることができるのです。
自社のビジネスモデルに沿って顧客とのつながりの構築を検討してください。
一度つながりが構築できても顧客がその価値を認めてくれないと簡単に切断されてしまいます。そのため、つながりを活用して価値を提供し続ける必要があります。
価値を提供し続けるために重要なのは、本来の顧客ニーズに立ち戻ることです。なぜ、顧客は自社を選んでくれているのかの本質に沿った価値を提供することができれば、つながりを維持し続けることができます。
後にご紹介するフィリップス社のソニッケアーの事例は、まさに顧客ニーズに沿った価値の提供に取り組んでいます。
顧客とのつながりから得られた視点を元にPromotion(販売促進)、Price(価格)、Product(製品)の見直しを図ります。
最も取り組みやすいのはPromotion(販売促進)でしょう。顧客を理解することによって求められるコミュニケーションがより明確になってくることが期待できます。
次に、Price(価格)について検討します。サブスクを意識した継続的な課金システムが構築できないかを考えてみましょう。
サブスクと聞くと、担当されている業種によっては「当社には無理!」って思う方もいるかもしれません。しかし、少しだけ考えてみてください。ほんの10年くらい前にはありえないと思われた多くの業種(自動車、お菓子、生花など)でサブスクビジネスが生まれています。
固定観念を持たずに可能性を検討してみましょう。
最後に、Product(製品)に顧客視点を取り入れます。顧客のニーズに合わせたパーソナライズされた製品開発が可能となります。
製品に付加されるべきサービスや逆に取り除いた方がよいものなど、つながりがあるからこそ得ることができる視点を活かせば、より顧客ニーズに沿った製品を生み出すことができます。
新製品を開発し、製品の選択肢が増えた際には、「診断コンテンツ」で商品レコメンドを行うのもおすすめです。
診断の質問でユーザーのニーズを把握し、ニーズに応じてパーソナライズされた最適な商品を診断結果で提案することで、スムーズに購買へとつなげられます。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
以上の3つのステップで自社へのエンゲージメント4Pの導入に取り組んでみてください。
エンゲージメント4Pを考える上でも、顧客ニーズに立ち戻って考えることは非常に重要です。顧客ニーズに着目して、エンゲージメント4Pを実践している事例として、フィリップス社の電動歯ブラシ「ソニッケアー」をご紹介します。
そもそも、電動歯ブラシを顧客が求める理由は何でしょうか?
電動歯ブラシの価格は通常の歯ブラシの何倍もします。交換するブラシヘッドも一般的な歯ブラシよりも高く設定されています。それでも購入する顧客には達成したいニーズがあるはずです。
電動歯ブラシを求める人のニーズは、歯を清潔に保ちたい、虫歯になりたくない、高齢になっても自分の歯で食事を楽しみたい、などです。
しかし、電動歯ブラシを買っただけでは、顧客ニーズを満たすことはできません。実際に使用して通常の歯ブラシよりも効果があったと実感してもらう必要があります。
そこで、フィリップス社はソニッケアーのアプリを開発することを考えたのです。
ソニッケアーのアプリには、ニーズを満たすための様々な機能があります。まず、歯磨きを習慣化するための記録機能。また、歯磨き時間と磨き残しの分析、ブラシヘッドの状況から交換時期を知らせてくれます。アマゾンとも連携が可能で定期購入までできるようにしています。歯医者の予約まで記録できるようになってます。
アプリでのつながりが顧客の歯磨き習慣の定着という役割を果たしてくれています。また、商品を提供するフィリップス社側では、アプリを通じて使用情報を収集でき、そのデータを活用したマーケティング、商品開発が可能になるわけです。
顧客価値の重要性が高まっている背景と顧客とのつながりを活用した顧客価値の維持向上のための新しいマーケティング4Pのあり方についてご説明しました。
前述でご紹介しましたように、ピクルスでは顧客とのつながりを構築し顧客価値向上に役立つ「キャンつく」や、データ収集・分析にも有効な診断コンテンツ作成ツール「ヨミトル」といったsaasを提供しています。詳しい情報については以下リンク先のページをご覧ください。
ぜひ、顧客とのつながりの構築とそれを活用した顧客価値の向上のご参考にしてください。
*参考文献
「マーケティングの新しい基本」(奥谷、岩井著、日経BP)
「世界最先端のマーケティング」(奥谷、岩井著、日経BP)
「見えざる真実」(カールアルブレヒト著、日本能率協会)
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更新日:2024.8.9 公開日:2024.8.7
藤田 春樹(ふじた はるき)
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